国土交通省が定める賃貸の原状回復をめぐるトラブルとガイドラインとは?
この記事では、神戸エリアの賃貸紹介を行う”OGAココヤル不動産”の担当者がプロの視点から、賃貸住宅の原状回復に関する国土交通省のガイドラインについて詳しく解説いたします。
賃貸物件を借りる際や退去時に知っておくべき重要な知識として、原状回復のルールや費用負担について知っていただける内容となっています。
原状回復ガイドラインとは何ですか?
原状回復ガイドラインとは、国土交通省が策定した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」のことを指します。このガイドラインは、賃貸住宅の退去時に発生する原状回復費用に関するトラブルを防ぐために作られました。
2024年に再改訂されたこのガイドラインは、賃貸住宅の契約時や退去時の参考資料として活用されることを目的としており、全173ページにわたって詳細な内容が記載されています。
ガイドラインが作られた背景
賃貸住宅の退去時に発生する原状回復費用をめぐって、入居者と大家さんの間でトラブルが急増していたことから、このガイドラインが作られました。特に以下のような問題が多く見られていました。
- どこまでが入居者の負担なのかが不明確
- 経年劣化による損耗も入居者に請求される
- 退去時の費用見積もりが高額すぎる
- 契約時の説明が不十分
原状回復の基本的な考え方
原状回復とは何を指すのか
原状回復とは、賃借人の居住・使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超える使用による損耗・毀損を復旧することを指します。
つまり、すべての損耗を元の状態に戻す必要はなく、以下の2つに分けて考えられています。
| 損耗の種類 | 負担者 | 具体例 |
|---|---|---|
| 通常の使用による損耗・経年劣化 | 賃貸人(大家さん) | 日照による壁紙の変色、畳の日焼け、通常使用による汚れ |
| 故意・過失による損耗 | 賃借人(入居者) | タバコのヤニ汚れ、釘穴、ペットによる傷 |
経過年数を考慮した負担割合
ガイドラインでは、入居期間が長くなるほど賃借人の負担が少なくなるという考え方を採用しています。これは、時間の経過とともに設備や内装の価値が下がることを考慮したものです。
2024年改定の主なポイント
2024年に実施された再改定では、以下のような重要な変更点があります。
適用範囲の拡大
- 事業用物件への適用範囲拡大
- 公営住宅への適用範囲拡大
- 英語版要約の作成による国際化対応
経年劣化と過失損傷の明確化
改定版では、どのような損耗が経年劣化に該当し、どのような損耗が過失による損傷に該当するかが、より具体的に示されました。
設備別の耐用年数と負担割合
ガイドラインでは、各設備の耐用年数が定められており、この期間を超えると原則として賃借人の負担は1円になります。
| 設備・内装 | 耐用年数 | 特記事項 |
|---|---|---|
| 壁紙(クロス) | 6年 | 6年で残存価値1円 |
| カーペット・クッションフロア | 6年 | 6年で残存価値1円 |
| 流し台 | 5年 | 5年で残存価値1円 |
| エアコン・ストーブ | 6年 | 6年で残存価値1円 |
| 畳・障子・襖 | – | 経過年数は考慮しない |
| 便器・洗面台 | 15年 | 給水衛生設備として長期設定 |
負担割合の計算方法
具体的な負担割合は以下の式で計算されます。
賃借人負担額 = 修繕費用 × 賃借人の負担割合
負担割合 = (耐用年数 – 入居年数)÷ 耐用年数
賃借人が負担すべき具体的な損耗例
壁・天井の損耗
- 賃借人負担:タバコのヤニ汚れ、釘やネジの穴(画鋲・ピンは除く)、落書き、カビ(換気を怠った場合)
- 賃貸人負担:日照による変色、通常使用による汚れ、画鋲やピンの穴
床の損耗
- 賃借人負担:引っ越し時のキズ、重量物落下による凹み、ペットによるキズ、ピアノなど特殊家具の跡
- 賃貸人負担:色あせ、通常使用による汚れ、一般的な家具を置いた跡
設備機器の損耗
- 賃借人負担:不適切な使用や手入れ不足による故障、紛失・破損
- 賃貸人負担:通常使用による機能低下、自然な摩耗
ガイドラインと契約書の関係
法的な優先順位
原状回復に関する適用順位は以下のようになっています。
- 法律(民法第621条など)
- 賃貸借契約書の内容
- 原状回復ガイドライン
ガイドライン自体には法的拘束力はありませんが、2020年の民法改正により、通常使用による損耗は借主の原状回復義務から除外されることが法律で明確化されました。
特約の有効性
契約書に記載された特約が以下の条件を満たす場合、有効とされます。
- 特約の内容が明確に記載されている
- 賃借人が特約について十分な説明を受けている
- 特約の内容が著しく不公平でない
- 法律に反していない
トラブル防止のための対策
入居時の対策
- 入居時の物件状況を写真で記録する
- 契約書の原状回復に関する条項を詳しく確認する
- 不明な点は契約前に必ず質問する
- 入退去時の物件状況確認リストを活用する
入居中の対策
- 日常的な清掃・メンテナンスを心がける
- 換気を十分に行い、カビの発生を防ぐ
- 大きな家具を置く際は床に保護材を敷く
- 壁に穴を開ける際は画鋲やピンを使用する
退去時の対策
- 退去立会いに必ず参加する
- 見積もり内容を詳しく確認する
- ガイドラインに基づいて負担の妥当性を検討する
- 不明な点は遠慮なく質問する
グレードアップの概念
2024年の改定では、グレードアップという概念が明確化されました。これは、賃借人の退去後に物件の価値や機能を向上させる修繕や改善を指します。
グレードアップの具体例
- 古い設備の高機能品への交換
- 一般的な壁紙から高級壁紙への張り替え
- 設備の機能向上を伴う修繕
これらの費用は原則として賃貸人が負担し、賃借人に請求することはできません。
トラブル解決のための制度
万が一、原状回復費用についてトラブルが発生した場合、以下の制度を活用することができます。
| 制度名 | 内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| 少額訴訟手続 | 60万円以下の金銭トラブル解決 | 原則1回の審理で解決 |
| 民事調停 | 調停委員による話し合い | 費用が安く、解決が早い |
| 消費者センター相談 | 専門相談員による助言 | 無料で相談可能 |
| 弁護士相談 | 法律専門家による助言 | 法的対応が可能 |
神戸エリアでの賃貸選びのポイント
神戸エリアで賃貸物件を選ぶ際は、原状回復ガイドラインの内容を踏まえて、以下の点に注意することをお勧めします。
契約前のチェックポイント
- 管理会社がガイドラインに準拠した対応をしているか確認
- 退去時の費用負担について明確な説明があるか
- 特約事項の内容が合理的で公平か
- 入居時の物件状況確認が適切に行われるか
神戸エリアの賃貸市場では、多くの管理会社が国土交通省のガイドラインに準拠した対応を行っています。しかし、契約前に原状回復に関する条項をしっかりと確認し、不明な点は遠慮なく質問することが重要です。
まとめ
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は、賃貸住宅のトラブル防止において非常に重要な指針です。2024年の再改定により、より明確で実用的な内容となりました。
賃貸住宅を借りる際は、このガイドラインの内容を理解し、適切な知識を持って契約することで、退去時のトラブルを未然に防ぐことができます。特に経年劣化と過失による損傷の区分け、耐用年数に基づく負担割合の考え方は重要なポイントです。
神戸エリアで賃貸物件をお探しの方は、原状回復に関する正しい知識を持った不動産会社を選び、安心して住居選びを進めていただければと思います。

